Torta Verde/トルタ・ヴェルデ

ズッキーニのトルタ・ヴェルデ完成品
ズッキーニのトルタ・ヴェルデ完成品

旬のローカル食材をふんだんに使った、子供にも人気の野菜パイ

リグーリア州のおふくろの味といえば、絶対に外せないトルタ・ヴェルデ。リグーリア産の旬の野菜をふんだんに使った、子供にも大人気の野菜パイです。代表的なのが、アルベンガ産のトロンベッタ(トランペット)という品種のズッキーニ(薄緑色で身が固くしまっており、ほのかな甘みのあるデリケートな風味)とお米のフィリングが入ったもの。秋になるとズッキーニに代わって、ズッカ(トロンベッタを夏に収穫せず、そのまま残しておくとオレンジ色の南瓜になります)、冬には朝鮮あざみやフダンソウを使います。地域や家庭によってお米の量や中身(メインの野菜+グリーンピースを加えたり、リコッタチーズを入れたりなど)がさまざまです。この一品は、食事の前菜、軽いランチや小腹がすいた時のおやつ、持ち寄りパーティや誕生日パーティのスナックとして、と頻繁に食卓に登場します。パン屋さんやお惣菜屋さんにも売っています。温かいままでも、冷めてからでもおいしいです。

料理を作った人:N.サルシ(N. Salsi)
イタリア・リグーリア州のフランス国境に程近い小さな村で田舎暮らしを満喫中。家庭菜園、自家製のワイン・オイル作りにいそしむ傍ら、築500年の自宅の改装にも精を出す日々を送っています。最近トリノにも居を構え、田舎と都市の両生活を楽しんでいます。
日本での実現可能度:★★★☆☆(材料代用で可能)

材料(4人分/直径28センチの丸型
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畑から収穫した野菜(ズッキーニ、トマト、パセリ)

畑から収穫した野菜(ズッキーニ、トマト、パセリ)

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トロンベッタ種ズッキーニ

トロンベッタ種ズッキーニ

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トロンベッタ(ズッキーニ) ……………… 500g
玉ねぎ ………………………………………… 1個
にんにく ……………………………………… 1片
リゾット用米 ………………………………… 35g
卵 ……………………………………………… L玉1個
パルミジャーノ・レッジャーノ(すりおろす) 70~80g
小麦粉 ………………………………………… 200g
エクストラ・バージン・オリーブオイル 40ml
水 ……………………………………………… 100ml
塩・こしょう ………………………………… 適量
マジョラム(あれば) ……………………… 適量

memo
トロンベッタ(ズッキーニ)は日本では扱われていないと思われます。現地(リグーリア州)では夏の間ならスーパー、市場で簡単に購入できます。日本で売っているズッキーニは水分が多いかもしれませんので、みじん切りにして水分が出てくるようであれば水切りしてから使ってください。リゾット用のお米が無い場合、残りごはん80gで代用しても可。

作り方(調理時間:60分)

1. パイ生地を作る。ボウルに小麦粉、塩小さじ1/2弱とエクストラ・バージン・オリーブオイルを入れ、水を少しずつ加えながら、弾力が出てまとまる固さ(耳たぶくらい)までこねる。ボウルにラップをして1時間ほど休ませる。
2. フィリングを作る。ズッキーニと玉ねぎを粗みじん、にんにくをみじん切りにする。
3. フライパンに大さじ2~3のエクストラ・バージン・オリーブオイル(分量外)を入れ、玉ねぎとにんにくを炒める。玉ねぎがしんなりとして透きとおってきたらズッキーニを加えてさっと炒め、火を止める。
4. 3.の粗熱が取れたらきれいなボウルに入れ、溶き卵、パルミジャーノ、リゾット用米(洗わないまま)、塩小さじ1/2、みじん切りにしたマジョラム、こしょう少々を加えて混ぜる。
5. 1.の生地の2/3分量をのし棒で伸ばして(かなり薄くなります)、型に敷き(型の外側に2~3cm長めに残す)、4.を入れて平らにならす。
6. 残りの生地も薄くのばし、5.の上にのせ、下の生地の長めに残した部分をかぶせてひだをつけながら閉じる。フォークで表面に空気穴をあける。
7. 6.の表面にエクストラ・バージン・オリーブオイル(分量外)を刷毛で塗り、180度のオーブンで45~50分程度、表面に焼き目がつくまで焼く。粗熱が取れたら切り分ける。

作り方のコツ

忙しいお母さんたちの中には、冷凍パイシートを使う人もいるようですが、やはり手作りの薄くてサクサクした生地にはかないません。生地は、べたつかずなめらかになるまでよくこねることと、1時間は休ませるのがコツ。以前、フィリング用のズッキーニを粗みじんに切るのが面倒で、粗めのおろし金を試したことがありますが、大量の水分が出てきてしまったので、やはり粗みじんに切るのが鉄則のようです。お米が野菜から出る適度な水分を吸収し、卵がつなぎの役目を果たし、外の皮はサクサク中身はしっとりホクホクの野菜のパイができあがります。

このお料理にまつわるエピソード

トロンベッタは比較的簡単に栽培ができるため、夏の間は家の畑で大量に採れるそれを消費すべく、義母がせっせとトルタ・ヴェルデ作りに励みます。同じレシピで作ったものでもマンマと同じ味にならないような気がするのは私だけではないようで、やはり料理の腕に年季の入ったご婦人達の作ったトルタには敵いません。この料理、ちょっとお味見のつもりでも「あともう一切れ」と止まらなくなるおいしさです。
日本で使うような立派な包丁を使う人はあまり多くなく、私の知っている限りでは、フルーツナイフのような小ぶりのナイフが主流です。義母のズッキーニを粗みじんにする工程はまさに神業で、椅子にどっしり腰をおろして首から下がるチェーンのついた眼鏡を鼻先にかけると、長いズッキーニを手に持ち、断面に小ぶりのナイフで4~5mm四方の賽の目をつけていきます。切り込みの入った部分を同じくらいの厚さに切り取ってボウルに入れ、の作業を延々と繰り返すのです。包丁とまな板を使ったほうが早い気がするのですが、お喋りしながらも、あっという間にボウルいっぱいにズッキーニのみじん切りができあがっているのにはいつも驚かされます。午前中に義母を訪ねる時、門をくぐると同時に、オーブンの天板いっぱいに作られたトルタの香りが漂ってくると「あぁ、夏が来た」と思うのです。

ぱぺら
2011年よりイタリア・リグーリア州に在住。イタリアの田舎生活、築500年になる自宅の改装やイタリア料理のレシピをブログにて執筆中。秋からピエモンテ州・トリノに本拠地を移す予定。
http://www.golosona.com/